「まだ科学で解けない13の謎」
最近、「まだ科学で解けない13の謎」(原題:"13 Things That Don't Make Sense: The Most Intriguing Scientific Mysteries of Our Time")という、アメリカの科学ジャーナリストの方が書かれた本を読んでいました。
著者ご本人も、量子物理学の博士号を取得されているということで、
偏見や「それまでの常識」、「こうあってもらいたい」という隠れた願望、経済的・権威主義的な思惑が、これまでいかに科学の発展を遅らせてきたか…という歴史的なエピソードも随所にちりばめながら、
可能な限り、「現在分からないことは、どのように分からないのか、またどこまで分かっているのか」ということに、真摯に粘り強く迫ろうとされている姿勢は、まさに「科学ジャーナリスト」に相応しいものと感じられます。
「訳者あとがき」にも書かれているように、この本は、「変則事象(アノマリー)に関する13編の物語」です。
変則事象とは何か。英語の"anomaly"は、文脈によって、『例外』『異様』『奇態』『矛盾』『逸脱』『偏差』『ずれ』などと訳される。つまり、正則をはずれた何か。最先端の知識・知見をもってしても解明できない謎、咀嚼できない事物や現象のことだ。(337頁)
そして、現代においてまだ科学で説明のつかない「変則事象」として、13のテーマが取り上げられています。
宇宙論の根源に位置しながら、あるのかないのか未だに分からない「暗黒物質・暗黒エネルギー(第1章)」に始まって、
なぜかニュートン物理学の法則に背く軌道で飛び続けている、2機の「パイオニア探査機(第2章)」、
「物理定数」は実は一定ではない(第3章)…つまり、これまでの科学の試みは、実は真実を大幅に簡略化しているのではないかという可能性について…
そして、この本の最終章(第13章)を飾っているのが、「ホメオパシー」です。
「生命とは何か?(第5章)」「巨大ウィルス(第8章)」「死(第9章)」「セックス(第10章)」「自由意志(第11章)」「プラシーボ効果(第12章)」・・・これらの内容もホメオパシーと深く関連していることを考えれば、なんとこの本の半分以上は、ホメオパシー絡みと言えます。
ホメオパシーが、現代において論議を呼ぶのも当然ですね。
この本にも書かれているように、ホメオパシーの作用を否定する最終的な研究はなされているとは言えないですし、
「ホメオパシー」を受け入れている人たちが皆「一枚岩」かと言えば、もちろんそんなことはないのです。
「政治家はダメだ」「マスコミはダメだ」…などと一緒くたに言われたりしますが、もちろん政治家の中にも、マスコミの中にもいろいろな人がいるのと同じです。
「科学者」の中にも、「医師」の中にも、いろいろな人がいるのと同じように、「ホメオパシー」に携わっている人の中にも、いろいろな人がいます。当たり前のことですが…
例えば、この本の中でも大きな懐疑をもって言及されている「嬰へ短調」「ト長調和音」「ミステリー・サークル」「パンケーキ」などから作られたレメディー。これらはもちろん、本来のホメオパシーの範疇には入らないと言わざるを得ません。そういうことを試みる方がいらっしゃるのは結構ですが、それまでも「ホメオパシー」である、と主張されたのでは、ちょっと困ってしまいます…。
そういう意味で、この本のように、「正しい意味での科学的な姿勢」をもって様々な「変則事象」に迫っていく試みには大賛成ですし、このような活動にこそ、人間の知性が生かされていくべきと思います。非常に誠実な、「科学的な」本でした。
では、最後にこの本の扉から引用しておきます。
科学において、最も刺激的な一語、
多くの大発見の先触れとなる言葉は、
「分かった(エウレカ)!」ではなくて、
「こりゃおかしい…」だ。
-アイザック・アシモフThe most exciting phrase to hear in science,
the one that heralds the most discoveries,
is not "Eureka!," but "That's funny..."
-Isaac Asimov
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■マイケル・ブルックス(著者HP)
http://www.michaelbrooks.org/