朝青龍は、場所前から追い込まれていました。
3場所連続の休場。
連日スポーツ紙やワイドショーが伝える、
「引退か?」の大合唱。
場所前の総見でも、白鵬には完敗でした。
多くの親方が、無理せずにもう1場所休場した方が良いのでは、
下手に出ると、引退に追い込まれるよ、
とコメントする中、
朝青龍は、出場を「強行」します・・・
・・・・・果たしてこれは、「強行」だったのでしょうか?
ある意味追い込まれていたことは、
おそらく事実だったでしょう。
しかし、朝青龍本人が、
状況をどのように把握していたのか、
認識していたのか、
それは別問題です。
朝青龍は、場所前の総見や稽古で、
これはいけそうだ! と思った、と言っています。
これは大方にとっては、大きな驚きだと思います。
傍目には、まったく逆でした。
白鵬にコロコロ負けて、まったく歯が立たない、
他の力士にも、ようやく勝ち越すのが精一杯。
場所に入ったら、連敗は必至。
大方はそう見ていました。
しかし、総見や稽古は、
本番ではありません。
あくまで稽古です。
稽古の目的は、
相手に勝つことではありません。
自分の中に、ある感覚を涵養することです。
自分の課題を試すことです。
今回、優勝決定戦の前、
朝青龍は、突き押しと、鉄砲という
相撲の基本稽古を繰り返しました。
以前に相撲記者を30年以上していた方から、
「朝青龍は、高校時代、そして大相撲の世界に入ってから、
基本動作を本当に執拗に反復していた。
それは凄かった。
日本人力士の10倍くらいやっていた。
その時の「貯金」は莫大だよ」
というお話を聞いたことがあります。
だから、今は余り稽古をしていないけれど、
昔取った杵柄というか、
その時の「貯金」はそう簡単には無くならない。
大好きな遊興、怪我や休場による稽古不足で、
その貯金は急速に無くなってきてはいるけれど、
もともとの「貯金の層」も半端じゃないのでしょう。
他の力士にとって、
かつては朝青龍は遙か仰ぎ見る存在だったのが、
近年はすぐ手が届きそうに見えているのだと思いますが、
富士山も近くに見えても実際には遠いように、
案外差はなかなか縮まらない。
朝青龍には、「朝青龍の相撲」という、
極めて強いイメージがあるのだと思います。
そして、イメージ通りに体を動かせる「貯金」がある。
鍵は、そのイメージ通りに体を動かせるかどうか。
イメージの「朝青龍の相撲」は、相手を圧倒する相撲なので、
その通りに動けば、
自動的に、朝青龍は相手を圧倒する。
決定戦前の基本動作の反復は、
そのイメージを強く喚起することだったのでしょう。
そして、イメージと自分の動きとを一致させる。
休場は、もちろん左肘や腰の故障によるものですが、
根本的には怪我や休場や遊興による稽古不足で、
「朝青龍の相撲」のイメージ通りに体が動かないことが
最大の原因だったと思います。
次回は、なぜ、白鵬の相撲を見ていなかったのか、について、
もう少し書きましょう。
そしてそのことと、イチローとを比較してみたいと思います。
イチローが昨年初めに言ったこと、
「今までは相手は自分だった。
今、ようやく他人を相手にできるところまで来た」
という言葉です。
つづく