« 靴磨き (1) | メイン | ロアジーナ (1) »

靴磨き (2)

それ以来、時々その人の話を聞くために、
時々帝国ホテルで靴を磨くようになりました。
以下、その方を師匠とお呼びします。


そこには、いろいろな方が来られます。
政治家、実業家、映画スター、スポーツ選手・・・
思いがけず、女優の栗原小巻さんには3度会いました。

ある年末の忙しい時、
行ってみると、とても混み合っていて、
5人くらい並んでいました。

実は、もう一人若い方も靴を磨いてくださるのですが、
私が目指しているのは、もちろん師匠。
並んでいる方も同じとみえて、
若い方の方に並んでいるのは、1人だけでした。

もちろん帝国ホテルで認められていらっしゃる方ですから、
若い方も腕は良いのですが、
トータルな力はまだまだ師匠には及びません。

師匠は、ゆったりとしている時には、一人30分、
混んでいる時でも15分から20分はかけるので、
これは相当に待つなあ、と思っていました。

私のすぐ前には、大きな紙袋を抱えた上品な女性が、
少し落ち着かなさそうに待っていました。

時々時計を見ながら、どうしよう、遅れちゃう、
という感じに見えます。
スカーフと品の良いサングラス姿でした。

どことなく見たことがある人だなあ、と思ったのですが、
ちょうど読みかけの面白い本がありましたので、
その女性のことは余り気に留めず、
本を読んでおりました。


1時間くらいしたでしょうか。
前の女性の番がようやく来ました。
紙袋から靴が入った箱を8つ!取り出すと、
「金ちゃん、これお願いします。」
と言って、にこっと微笑まれました。
そのお顔がとっても美しく、また上品でした。

すると師匠は、
「小巻ちゃん、今日もずっと待ってたの?
預けるんなら、並ばないでちょっとそこに置いてくれたら良かったのに・・・
今日は本番あるんじゃないの?」
と言われるのです。

「そうなの。実はもうすぐ行かなくてはならないので、
これ、お願いします。
今日はちょっと急いでいるので、ごめんなさい」
と言われました。

そして私にも「お待たせしてごめんなさい。」
と行って、深い会釈をして足早に去っていきました。

えっ 小巻ちゃん? ああそうか栗原小巻さんだったんだ。
なるほど・・・彼女はやっぱり普段からそういう人なんだ。
映画「忍ぶ川」以来、彼女のファンだった私は、
すっかり感じ入ってしまいました。

師匠の前に座ると、すぐに
「今の方は栗原小巻さんだったんですね」
と聞きました。

「そうなんです。預けていかれるだけなんだから、
さっと私の横に靴を置いていって下されば良いのに。
何度そう言っても、栗原さんは必ず並ばれるんです。
他の方や私に迷惑をかけるから、って。
たった数秒のことですから、別に誰にも迷惑をかけるわけでもないのにね。
付き人だっていらっしゃるのに、
絶対にご自分で持ってこられて、
必ず並ぶんですよ。
もう、まいっちゃいますね。」

ホントにまいちゃいました。

About

2008年04月26日 07:50に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「靴磨き (1)」です。

次の投稿は「ロアジーナ (1)」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。

Powered by
Movable Type 3.34